排便は健康のバロメーターともいわれるほど大切な人間の生理機能です。便秘はデリケートな話題ゆえに誰にも相談できず悩んでいる女性は多いのではないでしょうか。この記事では、食事により便秘を改善させたい女性にむけて、食生活のルールを解説します。食事による便秘の改善方法を知りたい人はぜひ読んでみてください。
便秘の基礎知識
ここでは、便秘の基本的な知識を解説します。便秘の定義と具体的な症状をみていきましょう。
便秘とは
便秘とは、便中の水分量が不十分になって便が硬くなったり、排便の通り道である腸菅が狭くなったりして、便をだすのが困難になる状態をさします。通常、健康状態の人は1日に1~2回の排便があります。しかし、便秘の人は3日以上排便がないことも多くあります。また、たとえ毎日排便があったとしても、残便感や排便の際に苦痛がある状態は便秘です。
便秘の症状
便秘の代表的な症状は次のとおりです。
・お腹が張って苦しい
・ガスがよくでる
・残便感がある
・食欲がない
・肌荒れがする
一般的に、便秘は男性よりも女性に多い傾向があります。女性は子宮による腸の圧迫やホルモンバランスの影響を受けやすいためです。また、高齢者は腸の機能低下や飲食量の減少により、性別にかかわらず便秘になりやすい特徴があります。
便秘の種類

便秘には大きくわけて、「器質性便秘」と「機能性便秘」の2種類があります。器質性便秘は大腸の器質的な病気が原因です。器質的な異常は病院での治療が必要となります。一方、機能性便秘は腸の機能低下や便意を我慢が原因で、食事による改善が可能です。次から、機能性便秘についてさらに3種類に分類し、それぞれの特徴を解説します。
しかん性便秘
「しかん性便秘」とは、大腸の運動が低下して生じる機能性便秘です。便秘のなかでも比較的に頻度が高く、女性や高齢者に多い便秘の種類とされます。腸管の緊張がゆるむと、便を送りだす動きが十分におこなわれなくなることが原因です。排出しきれなかった便は大腸内にとどまり続けるため、便の水分を過剰に吸収して便が硬化し、排便できない状態が生じます。
直腸性便秘
「直腸性便秘」とは、直腸に便がとどこおってうまく排便できなくなる機能性便秘です。便が直腸まで送りだされても、「便がしたい」という感覚が発生しないため、うまく排便できません。結果として直腸内に大量に便がたまり水分が吸収され硬くなり、便がフタをした状態になります。便意を我慢しがちな人や痔の症状がある人に多い便秘の種類です。
けいれん性便秘
「けいれん性便秘」とは、副交感神経の過度な緊張により、大腸が緊張して生じる機能性便秘の種類です。大腸の動きが不規則になり、便がうまく運ばれないためにウサギのフンのようなコロコロした状態になります。自律神経の乱れや精神的なストレスによって生じるケースも多く、便秘と下痢を交互に繰り返したり、残便感があったりといった症状が特徴的です。
便秘の主な原因
便秘の基本的な症状や種類を理解したら、次は便秘の代表的な原因について理解しましょう。この章では、便秘の3つの要因を解説します。
食物繊維の不足
食物繊維には便の量を増やし、腸の運動を活発にする役割があります。食物繊維の種類は不溶性と水溶性の2つがあり、効能を理解して摂取すると効果的です。不溶性の食物繊維は穀物や野菜に多く含まれます。一方、水溶性の食物繊維は海藻やこんにゃく、キノコ類に多い栄養素です。ダイエット中に不足しがちなのは水溶性ですが、どちらの食物繊維もバランスよく摂取しましょう。
偏った食事
ダイエットや偏食、ジャンクフードの食べ過ぎなど偏った食事は、便秘の原因のひとつです。ダイエットをすると、便を作る材料が少なくなるため、排便しにくくなります。朝・昼・夕の1日3食をきちんと食べないと、便量が増えず、スムーズな排便ができません。また、食べてはいるものの栄養バランスを無視して偏った食事をすると、ストレスを感じて便がでにくくなる一因になります。
ホルモンバランスの乱れ
生理前に便秘が生じやすくなるのは、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌量が増え、腸の動きを鈍らせるよう作用するためといわれています。ホルモンバランスはさらに、自律神経のバランスにも寄与するため、交感神経が優位になることも便秘の原因です。また、更年期の便秘もホルモンバランスや自律神経のバランスの変化が背景にあるとされています。
水分の摂取不足
便秘を解消させるには、便を柔らかくさせてだしやすくする必要があります。1日に摂取すべき水分量は食事に用いる水分を含めて1,500mlです。腸管にとどまった便は多くの水分を腸に吸収されてしまうため、硬くなる傾向にあります。「のどが乾かないから」「尿の回数が増えるから」と水を飲まないと、便の量や水分が減り、便がでにくくなります。意識して水分をこまめに摂取しましょう。
腸内環境の乱れ
便がうまく排出されず腸内に便が長期間たまると、腸内環境が乱れる原因になります。便が腸内の悪玉菌のエサとなって増殖し、有害物質の元となるガスを発生させるためです。腸内環境が乱れると、便秘だけでなく肌荒れや冷えなどさまざまなトラブルももたらします。腸は神経とも密接な関係があるため、便秘は精神的にもストレスとなります。
便秘は食事で改善できる

機能性の便秘の多くは、ムリなダイエットや暴飲暴食、食物繊維や水分不足など、腸や体に負担がかかるバランスの悪い食生活が原因とされています。食事の量や質の改善など、便の状態や排出によい影響を与えられる食生活へと改善することによって、便秘の解消が可能です。
ただし、便秘によっては食事で改善しない種類もあります。先述したとおり、けいれん性の便秘は腸の器質による便秘です。機能性の便秘とは性質が異なるため、不溶性の食物繊維や刺激性の強い食品の摂取は避けてください。
便秘になるNGな食事の例
便秘になる人が陥りがちな食事の例を紹介します。この章では、代表的な3つの食事例についてです。
朝食を抜きがち
夜間に休んでいた胃に食べ物が入ると刺激されて排便が促進されるため、朝食を抜くと体内リズムが整いにくくなり、便意も生じにくくなります。また、便意が最も生じやすい時間帯は朝食後といわれており、朝食抜きの生活が慢性化すると自律神経のはたらきも鈍るため、排便を促すシステムも正常に機能しません。
夜遅い飲食
休みの前日や仕事終わりの夜食など、夜遅くの飲食は便秘の原因になります。できるだけ、就寝3時間前を過ぎてからの飲食は避けましょう。睡眠直前に食べた物は睡眠中に消化活動がおこなわれますが、睡眠中は身体を動かさないため、作られたエネルギーは脂肪としてため込まれるからです。睡眠時は胃腸の動きが鈍化し、効率的にエネルギーをうまく消化できません。
過度なダイエット
炭水化物ダイエットや単品ダイエットなどの過度なダイエットは、必要な栄養素や油分の欠乏を引き起こし、便秘の原因となります。また、栄養面だけでなく、ダイエットによる精神的なストレスも腸内機能の低下の一因です。食事の栄養バランスが悪くなると、基礎代謝の低下や血流の悪化など、身体と精神の両側面における体調不良につながります。
便秘解消の食事|4つのルール

一方で、正しい食事を心がけると、食は便秘解消に効果的です。この章では、便秘解消に硬化的な食事をとるうえでの4つのルールを解説します。
十分に水分を摂取する
便秘の人は、今よりも摂取する水の量をコップ2杯分(約400ml)増やすことを心がけてください。忘れがちな人は、朝目覚めた直後に1杯、寝る前に1杯飲むと決めておきましょう。冷たい水が苦手な人は白湯でも効果的です。目覚めの1杯は消化管の動きを促すはたらきもあります。ただし、一気に飲むと水中毒を引き起こす原因になるため、少しずつゆっくり飲んでください。
食物繊維を増やす
食生活の欧米化が進み、性別や世代を問わず食物繊維は不足気味です。今よりも2品ほど食物繊維の入った食品をプラスしましょう。コンビニやスーパーのカット野菜やお惣菜、野菜ジュースなど身近な商品からも食物繊維は摂取可能です。バナナやキウイフルーツ、乾燥プルーンやアボカドにも含まれています。ご飯を白米から発芽玄米や麦飯に変えるだけでも効果的です。
発酵食品・乳酸菌をとる
腸内環境を整えるには、発酵食品や乳酸菌の意識的な摂取がポイントです。発酵食品や乳酸菌に含まれるプロバイオティクスを補給すると、便秘は改善されます。プロバイオティクスはキムチや納豆や漬物、ヨーグルトやチーズだけでなく、味噌や酒などの調味料にも含まれる菌です。毎日継続すると効果を実感しやすくなるため、定期的な摂取を心がけましょう。
食生活のリズムを整える
食事の時間を規則正しくすると、腸内運動のリズムが習慣化されて排便が活性化されます。また、毎日朝食を摂る、朝夕晩1日3食を習慣づけることも便の材料を増やしたり、便の機能を安定化させたりするうえで効果的です。先述したとおり、夜遅くに食事をとると腸内のリズムが乱れるため、21時以降には飲食をしないようにしましょう。
まとめ
機能性の便秘は食事での改善が可能です。食物繊維やこまめな水分補給を意識し、栄養バランスの取れた食事を心がけたいですね。まずは日頃の食生活を見直し、改善できるところから始めましょう。