
心と体の健康を左右する「腸」の秘密
はじめに
腸に関する健康食品は巷に溢れていますが、なぜこんなに「腸が大切」と言われるか、ご存じでしょうか?
今回は、腸が担ってくれている大切な役割をご紹介します。
実は、便に関することだけでなく、体や心の健康にまで大きな影響を及ぼす腸。
重要な役割を担う腸の役割をしっかり知っていきましょう。
<記事の要約>
・腸は、小腸+大腸から成り立つ。人間の腸内側の面積はテニスコート一面分(32㎡)にも及ぶ。
・腸の役割はたくさん。体の中の「ハブ」の役目を担い、脳を始めとする様々な臓器と連携しながら全身の健康バランスを保つ役割を持っている。
1.腸の構造
腸は、小腸と大腸に大別されます。小腸の内側には「絨毛」と呼ばれる突起がびっしりとついていて、そのおかげで表面積が広がり、栄養吸収などを効率よく行えるようになっています。
日本人の平均的な腸の長さを調べると、大腸だけで1.5m、小腸に至っては6~8mもあると言われています。 内側の総面積は、絨毛のおかげもあって32㎡もあり、テニスコート一面分にものぼります。人間1人の体の中に、 テニスコート一面分もの面積を持つ臓器が詰まっていて、それが「腸」なのです。
2.腸の役割
では、なぜ腸だけで、テニスコート一面分もの面積を持っているのでしょうか。それは、腸が全身の健康を左右する、様々な機能を担っているためです。腸の代表的で大切な機能をいくつかご紹介します。
2-1 消化・吸収の総仕上げ
腸の中でも、小腸では「消化・吸収の総仕上げ」が行われています。栄養を正しく吸収できなければ、生きていくことが難しくなってしまいます。小腸へは、ある程度消化された状態で食べ物が送られてきます。その量は、1日9リットルにも及ぶと言われています。このうち、7リットルが小腸で吸収され、残りの2リットルは大腸で処理されます。
食べ物は、小腸を通過する間にさらに消化されます。先ほど紹介した「絨毛」で、その広い表面積を活かして栄養素が吸収され、血管を取って次の臓器へと送られるのです。
2-2 消化された後のかすを処理
小腸で吸収されなかったものは、大腸へ送られます。大腸でも一部栄養素を吸収しながら、腸内細菌を使って残りかすを発酵させます。その過程で水分も吸収して、最終的に要らない分を体外に排出できるよう便を生成するのです。このとき、大腸での滞在時間が長いと水分が吸収され過ぎて便が固くなり、便秘になりやすくなります。
反対に、大腸をあっという間に通り過ぎてしまうと、水分量が多くなって軟便になってしまうのです。
2-3 体内の「ハブ」全身機能のバランスを維持
腸が関係しているのは、栄養素だけではありません。実は、腸には神経細胞が約1億個も存在すると言われています。腸の機能は、脳によってコントロールされているのではなく、 腸自身が判断しているため「第二の脳」とも呼ばれているほどです。この神経細胞が他の臓器と繋がって、様々な役割を果たしています。今度は、腸が全身に果たす役割をご紹介します。
①脳
腸は、脳と相互に情報を交換してコミュニケーションをとっていると言われています。緊張するとお腹がゆるくなったり、旅行先などの慣れない環境だと便秘になってしまったり、 という経験はありませんか?これは、脳が腸と相互にコミュニケーションをとっていて、気持ちの状態が互い影響し合っているからなのです。これは「脳腸相関」と呼ばれています。
②多臓器コミュニケーション
腸がコミュニケーションをとっている臓器は、脳だけではありません。実は腸は、体の各臓器と神経系ネットワークで繋がっていて「スイッチングハブ」のような役割を果たしています。 腸によって影響を受ける機能は、消化・栄養の貯蔵・血流コントロール・呼吸の深さ・免疫力・ホルモン分泌など、多岐に渡ります。まさに、腸は全身のバランス維持のために働いてくれている、 重要な臓器なのです。
2-4 免疫
体に外敵が入ってきた際に、全身への侵入や増殖を防いでくれるのは「免疫細胞」です。実はこの免疫細胞、なんと約6割が腸に存在しています。それは、体内に入ったものは、ほとんどが腸を通って全身に巡り始めるので、腸が体の「玄関口」になっているためです。腸に病原菌などが入ると、それを察知した腸内の免疫細胞が危険信号を出し、腸自身が抗菌作用のある物質を分泌して病原菌を撃退してくれるのです。
さらに、腸壁にある「パイエル板」という器官は、生まれたばかりの免疫細胞に外敵の種類を覚えさせるという「新人教育」もしてくれているといいます。
つまり、腸はすごい機能を駆使して、体を外敵から守ってくれる私たちの盾と言えるのです。
2-5 幸福感
腸はなんと、人間の「幸福感」にも影響します。人の情緒を左右する物質に「セロトニン」があります。その特性から別名「幸せホルモン」とも呼ばれているのですが、このセロトニンの9割が腸管で作られるのです。 実は、セロトニンには自律神経を整えたり、心を前向きにしたりと気持ちに影響する左右だけでなく、便を外に出す「ぜんどう運動」を活発にさせるはたらきもあると言われています。
また、興奮物質を抑制するので、イライラを起こしにくくするはたらきもあります。うつ病患者には下痢や便秘が多いとのデータがあるほど、腸内環境と心の健康は密接に繋がっているのです。
まとめ
腸は、小腸と大腸に大別されますが、平均して7.5~9.5mに至るほど長く、その表面積はテニスコート一面分にも及びます。腸が、体の中でこれほど大きいことが、この臓器の重要性を表しています。 腸は、それ自体が消化・吸収という働きをするだけでなく、他の臓器と密接に関係し合いながら、全身の健康バランスを保つという重要なはたらきをしてくれています。もはや、腸の健康=人の健康と言っても過言でないほど、腸は心と体の健康に大きな影響を持っているのです。
大切な腸を労わり、心身の健康を手に入れましょう。